OSI参照モデルの一番下にあるのが第1層(物理層)です。LANケーブルや光ファイバー、Wi-Fiの電波など、「目に見える・さわれる」部分にいちばん近い層です。
この記事では、物理層の役割、身近な例、TCP/IPモデルでの位置づけ、よくあるトラブルと安全な確かめ方を解説します。OSI参照モデルの全体像は、シリーズの全体解説の記事で紹介しています。

物理層とは?役割をひとことで

物理層は、データの0と1(ビット)を、電気の信号・光・電波などに変えて送り、受け取った信号をまた0と1に戻す役割をもちます。
物理層が決めているのは、たとえば次のようなことです。
- 伝える方法:電気(銅線)、光(光ファイバー)、電波(無線)のどれを使うか
- 信号の形:0と1をどんな電圧・光の点滅・電波の変化で表すか
- コネクタやケーブルの形:LANケーブルの差し込み口(RJ-45)や、ピンの並び
- 速さと距離:1秒あたりにどれだけ送れるか、どこまで届くか
物理層は「中身が何のデータか」は気にしません。ただ0と1を正しく運ぶことに集中します。宛先を見て届け先を決めるのは、もっと上の層の仕事です。
物理層の身近な例
| 分類 | 例 | ポイント |
|---|---|---|
| ケーブル | LANケーブル(ツイストペアケーブル)、光ファイバー、同軸ケーブル | カテゴリ(Cat5e、Cat6など)で対応する速さが変わる |
| 無線 | Wi-Fiの電波(2.4GHz帯・5GHz帯など) | 電波の届き方は壁や距離、ほかの電波の影響を受ける |
| コネクタ | RJ-45(LANの差し込み口)、光ファイバーのコネクタ | 形が合わないと物理的につながらない |
| 機器 | リピーター、リピーターハブ、メディアコンバーター、ネットワークカードの送受信部分 | 信号を中継・変換するだけで、宛先は見ない |
| データの呼び方(PDU) | ビット | 0と1の並びそのもの |
LANの規格として広く使われているイーサネットは、IEEEの802.3という規格で決められています。IEEEの説明によると、802.3は同軸ケーブル・ツイストペア(より対線)・光ファイバーなどの上で動く物理層の装置(PHY)と、その上のMAC(媒体アクセス制御)をあわせて定めています。つまり、イーサネットは物理層と次のデータリンク層にまたがる規格です。Wi-Fi(IEEE 802.11)も同じように、物理層とデータリンク層の両方を決めています。
TCP/IPモデルではどこにあたる?
インターネットのホストの要件をまとめたRFC 1122では、TCP/IPの層をアプリケーション層・トランスポート層・インターネット層・リンク層の4つに分けています。OSIの物理層は、データリンク層といっしょに、TCP/IPのリンク層にふくまれます。
TCP/IPの世界では、物理層の細かい決まりはIEEEなどほかの規格にまかせていて、IPは「その下で何が使われていても動く」ように作られています。だからこそ、同じブラウザで有線LANでもWi-Fiでもスマホの回線でも同じようにWebを見られるのです。
よくあるトラブルと確かめ方
「急にネットにつながらなくなった」とき、まず物理層から確かめると、意外とあっさり原因が見つかることがあります。
よくある原因
- LANケーブルが抜けかけている、ツメが折れている
- ケーブルが古い・傷んでいる、規格(カテゴリ)が速さに合っていない
- ルーターやスイッチの電源が入っていない、ポートが故障している
- Wi-Fiの電波が弱い(ルーターから遠い、壁が多い、電子レンジなどの影響)
目で確かめる
- 機器のポートのランプ(リンクランプ)が点いているか
- ケーブルを別のポートや別のケーブルに差しかえると直るか
コマンドで確かめる(Linuxの例)
次のコマンドは、自分のパソコンのネットワークの状態を表示するだけの確認用です。
ip link show
インターフェースの行に state UP と出ていればリンクがつながっています。NO-CARRIER や state DOWN と出ていたら、ケーブルや相手の機器など物理的な接続を疑いましょう。
ethtool eth0
ethtool が入っている環境では、有線LANの速さ(Speed)や全二重・半二重(Duplex)、リンクの有無(Link detected)を確かめられます。eth0 の部分は、ip link show で表示されたインターフェース名に置きかえてください。思ったより遅い速さで接続されているときは、ケーブルの規格や傷みを疑うきっかけになります。
nmcli device status
NetworkManagerを使っている環境では、有線・無線それぞれが「接続済み」かどうかを一覧で見られます。
よくある質問
ハブとスイッチはどうちがう?
昔の「リピーターハブ」は、受け取った信号をすべてのポートにそのまま流す、物理層の機器です。いまよく使われる「スイッチ(スイッチングハブ)」は、MACアドレスを見て必要なポートだけに送る、データリンク層の機器です。家電量販店などで「ハブ」として売られているものも、多くはスイッチングハブです。
Wi-Fiは物理層?
Wi-Fiの電波の部分は物理層ですが、どの機器が電波を使って送るかを調整したり、アクセスポイントにつないだりする部分はデータリンク層です。Wi-Fiの規格(IEEE 802.11)は、この2つの層をあわせて決めています。
ケーブルを高いものに変えると速くなる?
ケーブルは、機器や回線が対応している速さを出すための条件の一つです。ケーブルの規格が足りていないと遅くなることはありますが、回線やルーターの速さ以上には速くなりません。
まとめ
- 物理層は、0と1を電気・光・電波に変えて送る、OSI参照モデルの一番下の層
- LANケーブル、光ファイバー、Wi-Fiの電波、コネクタ、リピーターなどが身近な例。データの呼び方はビット
- TCP/IPでは、データリンク層といっしょに「リンク層」にふくまれる
- つながらないときは、ランプ、ケーブルの差しかえ、
ip link showなどで最初に確かめる
次の層は第2層(データリンク層)です。MACアドレスやスイッチのしくみを、シリーズの次の記事で解説します。
OSI参照モデル シリーズ記事
このシリーズでは、OSI参照モデルの全体像と、7つの層を1つずつ解説しています(各記事は順に公開予定です)。
- OSI参照モデルとは?(全体像)
- 第1層 物理層
- 第2層 データリンク層
- 第3層 ネットワーク層
- 第4層 トランスポート層
- 第5層 セッション層
- 第6層 プレゼンテーション層
- 第7層 アプリケーション層
参考資料
- ISO/IEC 7498-1:1994 Information technology — Open Systems Interconnection — Basic Reference Model: The Basic Model
- ITU-T Recommendation X.200 (07/94) Basic Reference Model: The basic model
- RFC 1122: Requirements for Internet Hosts – Communication Layers
- IEEE 802.3-2022 IEEE Standard for Ethernet
- IEEE 802.11-2020

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