OSI参照モデルの第3層(ネットワーク層)とは?役割と身近な例

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OSI参照モデルの第3層(ネットワーク層)は、IPアドレスを使って、ネットワークをいくつもまたいで、最終的な届け先までデータを運ぶ層です。「L3スイッチ」の「L3」はこの層のことです。

この記事では、ネットワーク層の役割、IPアドレスやルーターなどの身近な例、TCP/IPモデルでの位置づけ、つながらないときの確かめ方を解説します。

OSI参照モデルの第3層ネットワーク層を強調した7層図と、その役割・身近な例
目次

ネットワーク層とは?役割をひとことで

家のLANからデフォルトゲートウェイと複数のルーターを経由して遠くのサーバーまでパケットが運ばれる経路図

第2層(データリンク層)が届けられるのは「同じネットワークの中のとなりの機器」まででした。ネットワーク層は、それをこえて、世界中のネットワークの中から届け先を見つけ、道順を選んで運ぶ役割をもちます。手紙にたとえると、住所(IPアドレス)を書いて、郵便局(ルーター)が次々に中継して届けるイメージです。

主な仕事は次のとおりです。

  • 住所をつける:送信元と宛先のIPアドレスをヘッダーに書く
  • 道順を選ぶ(ルーティング):ルーターが経路の表(ルーティングテーブル)を見て、次にどこへ送るかを決める
  • 迷子を防ぐ:パケットに寿命(IPv4のTTL、IPv6のHop Limit)をつけ、ルーターを通るたびに減らして、ぐるぐる回り続けないようにする
  • 大きさの調整:途中のネットワークで送れる大きさに合わせて分割する(IPv4の場合。IPv6では送信元が調整する)

なお、IP自体は「確実に届くこと」を保証しません。RFC 1122でも、IPのデータグラムはこわれたり、重複したり、順番が入れかわったり、届かなかったりすることがあり、確実に届ける必要があるときはIPより上の層が受け持つと説明されています。これが次の第4層(トランスポート層)のTCPの仕事です。

ネットワーク層の身近な例

分類例ポイント
アドレスIPv4アドレス(例:192.168.1.10)、IPv6アドレス(例:2001:db8::1)IPv4は32ビット、IPv6は128ビット(RFC 8200)
機器ルーター(家庭用のWi-Fiルーターもふくむ)、L3スイッチIPアドレスを見て、次の行き先を選ぶ
プロトコルIP(IPv4:RFC 791、IPv6:RFC 8200)、ICMP(RFC 792、IPv6用はRFC 4443)ICMPはエラーの知らせや、pingの応答に使われる
設定デフォルトゲートウェイ「知らない宛先は、ここ(ルーター)に送る」という出口の設定
データの呼び方(PDU)パケットIPのヘッダー(IPアドレスなど)が付いたデータ

デフォルトゲートウェイとは

パソコンは、宛先が同じネットワークの中なら直接(第2層で)送り、ちがうネットワークならデフォルトゲートウェイ(ふつうは家のルーター)に送ります。デフォルトゲートウェイの設定がないか、まちがっていると、同じネットワークの中とは通信できるのに、インターネットにはつながらない、という状態になります。

ICMPとping

ICMP(Internet Control Message Protocol)は、「宛先に届けられなかった」などのエラーを知らせたり、相手が応答するかを確かめたりするためのプロトコルです。RFC 1122では、ICMPはIPの上に乗って運ばれるものの、IPに欠かせない一部として扱われています。ping は、このICMPの「エコー要求」を送り、「エコー応答」が返ってくるかを確かめるコマンドです。

VPNとネットワーク層

VPN(仮想プライベートネットワーク)には、IPパケットをまるごと暗号化して別のパケットの中に包み、離れたネットワークまで運ぶタイプがあります。インターネットの上に「自分専用のトンネル」を作るイメージで、外出先から会社のネットワークにつなぐときや、公衆Wi-Fiで通信の中身を見られにくくしたいときに使われます。ネットワーク層のしくみを知っておくと、VPNにつないだときに経路やIPアドレスがどう変わるのかも理解しやすくなります。

公衆Wi-Fiをよく使う人は、個人向けのVPNサービスを使う方法もあります。

日本公式サイト【Nord VPN】

ファイアウォールとネットワーク層

パケットフィルタリング型のファイアウォールは、ヘッダーに書かれた送信元・宛先のIPアドレス(第3層)や、ポート番号(第4層)を見て、通すか止めるかを決めます。種類ごとのちがいはファイアウォールの重要性と仕組みを徹底解説でくわしく紹介しています。また、特定の宛先あてのパケットをルーターでわざと捨てる「ブラックホールルーティング」も、ネットワーク層の経路のしくみを使った方法です(ブラックホールルーティングとは?)。

TCP/IPモデルではどこにあたる?

RFC 1122が定めるTCP/IPの4つの層では、OSIのネットワーク層はインターネット層にあたります。TCPやUDPなど、インターネットのトランスポート層のプロトコルはすべて、IPを使ってデータを送信元のホストから宛先のホストまで運びます。IPはOSIの層の番号にもほぼそのまま対応するので、「IP=L3」と覚えてよいでしょう。

よくあるトラブルと確かめ方

よくある原因

  • IPアドレスが自動で配られていない(DHCPの不調)
  • デフォルトゲートウェイの設定がない・まちがっている
  • 途中のルーターや回線で止まっている
  • ファイアウォールでその宛先あての通信が止められている

コマンドで確かめる(Linuxの例)

次のコマンドは、自分のパソコンの設定を表示したり、相手にふつうの確認用の通信を少しだけ送ったりするものです。宛先には、自分が管理する機器や、ふだん使っている公開サービスを指定してください。

ip a

インターフェースごとのIPアドレスが表示されます。inet がIPv4、inet6 がIPv6です。IPv4アドレスが 169.254. で始まる場合は、DHCPからアドレスを受け取れていない可能性があります。

ip route

経路の表が表示されます。default via 192.168.1.1 のような行が、デフォルトゲートウェイです。この行がなければ、インターネットへの出口がありません。

ping -c 4 192.168.1.1

デフォルトゲートウェイ(例では 192.168.1.1)に4回だけpingを送ります。返ってくれば、自分のパソコンからルーターまでは第3層で通じています。次に、インターネット上の宛先にも同じように確かめます。

traceroute example.com

宛先までに通るルーターを順に表示します(環境によっては tracepath を使います)。どこから先で応答がなくなるかを見ると、問題のある区間の見当がつきます。ただし、ICMPなどに応答しない設定のルーターやサーバーも多いため、「* * *」と出ても、そこで通信が止まっているとは限りません。

よくある質問

IPアドレスとMACアドレスのちがいは?

IPアドレス(第3層)は、最終的な届け先を表す「住所」で、ネットワークをまたいでも変わりません。MACアドレス(第2層)は、となりの機器まで届けるための「宛名」で、ルーターを通るたびに次の区間用のものに付けかえられます。

IPv4とIPv6は何がちがう?

いちばん大きなちがいはアドレスの長さで、IPv4は32ビット、IPv6は128ビットです(RFC 8200)。IPv6ではアドレスの数が大きく増え、ヘッダーのつくりも整理されています。いまは両方が並んで使われています。

pingが返らないとつながっていない?

そうとは限りません。セキュリティの理由などでpingに応答しない設定のサーバーもあります。pingが返らなくても、Webページが開けるなら、第3層より上は通じています。

まとめ

  • ネットワーク層は、IPアドレスを使ってネットワークをまたいで届け先まで運ぶ層
  • IPアドレス、ルーター、デフォルトゲートウェイ、ICMP(ping)が身近な例。データの呼び方はパケット
  • IPは確実に届くことを保証しない。確実さは上の層(TCP)が受け持つ
  • TCP/IPでは「インターネット層」にあたる
  • 確かめるときは ip a → ip route → ping → traceroute の順に見る

前の層は第2層(データリンク層)、次の層は第4層(トランスポート層)です。どちらもシリーズの記事で解説しています。

OSI参照モデル シリーズ記事

このシリーズでは、OSI参照モデルの全体像と、7つの層を1つずつ解説しています(各記事は順に公開予定です)。

参考資料

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この記事を書いた人

社内エンジニアとして、SREとセキュリティの仕事をしています。サーバーの構築や運用、クラウド環境の設計にも関わってきました。趣味はゲームと漫画・アニメ。

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