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OSI参照モデルの第3層(ネットワーク層)は、IPアドレスを使って、ネットワークをいくつもまたいで、最終的な届け先までデータを運ぶ層です。「L3スイッチ」の「L3」はこの層のことです。
この記事では、ネットワーク層の役割、IPアドレスやルーターなどの身近な例、TCP/IPモデルでの位置づけ、つながらないときの確かめ方を解説します。

ネットワーク層とは?役割をひとことで

第2層(データリンク層)が届けられるのは「同じネットワークの中のとなりの機器」まででした。ネットワーク層は、それをこえて、世界中のネットワークの中から届け先を見つけ、道順を選んで運ぶ役割をもちます。手紙にたとえると、住所(IPアドレス)を書いて、郵便局(ルーター)が次々に中継して届けるイメージです。
主な仕事は次のとおりです。
- 住所をつける:送信元と宛先のIPアドレスをヘッダーに書く
- 道順を選ぶ(ルーティング):ルーターが経路の表(ルーティングテーブル)を見て、次にどこへ送るかを決める
- 迷子を防ぐ:パケットに寿命(IPv4のTTL、IPv6のHop Limit)をつけ、ルーターを通るたびに減らして、ぐるぐる回り続けないようにする
- 大きさの調整:途中のネットワークで送れる大きさに合わせて分割する(IPv4の場合。IPv6では送信元が調整する)
なお、IP自体は「確実に届くこと」を保証しません。RFC 1122でも、IPのデータグラムはこわれたり、重複したり、順番が入れかわったり、届かなかったりすることがあり、確実に届ける必要があるときはIPより上の層が受け持つと説明されています。これが次の第4層(トランスポート層)のTCPの仕事です。
ネットワーク層の身近な例
| 分類 | 例 | ポイント |
|---|---|---|
| アドレス | IPv4アドレス(例:192.168.1.10)、IPv6アドレス(例:2001:db8::1) | IPv4は32ビット、IPv6は128ビット(RFC 8200) |
| 機器 | ルーター(家庭用のWi-Fiルーターもふくむ)、L3スイッチ | IPアドレスを見て、次の行き先を選ぶ |
| プロトコル | IP(IPv4:RFC 791、IPv6:RFC 8200)、ICMP(RFC 792、IPv6用はRFC 4443) | ICMPはエラーの知らせや、pingの応答に使われる |
| 設定 | デフォルトゲートウェイ | 「知らない宛先は、ここ(ルーター)に送る」という出口の設定 |
| データの呼び方(PDU) | パケット | IPのヘッダー(IPアドレスなど)が付いたデータ |
デフォルトゲートウェイとは
パソコンは、宛先が同じネットワークの中なら直接(第2層で)送り、ちがうネットワークならデフォルトゲートウェイ(ふつうは家のルーター)に送ります。デフォルトゲートウェイの設定がないか、まちがっていると、同じネットワークの中とは通信できるのに、インターネットにはつながらない、という状態になります。
ICMPとping
ICMP(Internet Control Message Protocol)は、「宛先に届けられなかった」などのエラーを知らせたり、相手が応答するかを確かめたりするためのプロトコルです。RFC 1122では、ICMPはIPの上に乗って運ばれるものの、IPに欠かせない一部として扱われています。ping は、このICMPの「エコー要求」を送り、「エコー応答」が返ってくるかを確かめるコマンドです。
VPNとネットワーク層
VPN(仮想プライベートネットワーク)には、IPパケットをまるごと暗号化して別のパケットの中に包み、離れたネットワークまで運ぶタイプがあります。インターネットの上に「自分専用のトンネル」を作るイメージで、外出先から会社のネットワークにつなぐときや、公衆Wi-Fiで通信の中身を見られにくくしたいときに使われます。ネットワーク層のしくみを知っておくと、VPNにつないだときに経路やIPアドレスがどう変わるのかも理解しやすくなります。
公衆Wi-Fiをよく使う人は、個人向けのVPNサービスを使う方法もあります。
ファイアウォールとネットワーク層
パケットフィルタリング型のファイアウォールは、ヘッダーに書かれた送信元・宛先のIPアドレス(第3層)や、ポート番号(第4層)を見て、通すか止めるかを決めます。種類ごとのちがいはファイアウォールの重要性と仕組みを徹底解説でくわしく紹介しています。また、特定の宛先あてのパケットをルーターでわざと捨てる「ブラックホールルーティング」も、ネットワーク層の経路のしくみを使った方法です(ブラックホールルーティングとは?)。
TCP/IPモデルではどこにあたる?
RFC 1122が定めるTCP/IPの4つの層では、OSIのネットワーク層はインターネット層にあたります。TCPやUDPなど、インターネットのトランスポート層のプロトコルはすべて、IPを使ってデータを送信元のホストから宛先のホストまで運びます。IPはOSIの層の番号にもほぼそのまま対応するので、「IP=L3」と覚えてよいでしょう。
よくあるトラブルと確かめ方
よくある原因
- IPアドレスが自動で配られていない(DHCPの不調)
- デフォルトゲートウェイの設定がない・まちがっている
- 途中のルーターや回線で止まっている
- ファイアウォールでその宛先あての通信が止められている
コマンドで確かめる(Linuxの例)
次のコマンドは、自分のパソコンの設定を表示したり、相手にふつうの確認用の通信を少しだけ送ったりするものです。宛先には、自分が管理する機器や、ふだん使っている公開サービスを指定してください。
ip a
インターフェースごとのIPアドレスが表示されます。inet がIPv4、inet6 がIPv6です。IPv4アドレスが 169.254. で始まる場合は、DHCPからアドレスを受け取れていない可能性があります。
ip route
経路の表が表示されます。default via 192.168.1.1 のような行が、デフォルトゲートウェイです。この行がなければ、インターネットへの出口がありません。
ping -c 4 192.168.1.1
デフォルトゲートウェイ(例では 192.168.1.1)に4回だけpingを送ります。返ってくれば、自分のパソコンからルーターまでは第3層で通じています。次に、インターネット上の宛先にも同じように確かめます。
traceroute example.com
宛先までに通るルーターを順に表示します(環境によっては tracepath を使います)。どこから先で応答がなくなるかを見ると、問題のある区間の見当がつきます。ただし、ICMPなどに応答しない設定のルーターやサーバーも多いため、「* * *」と出ても、そこで通信が止まっているとは限りません。
よくある質問
IPアドレスとMACアドレスのちがいは?
IPアドレス(第3層)は、最終的な届け先を表す「住所」で、ネットワークをまたいでも変わりません。MACアドレス(第2層)は、となりの機器まで届けるための「宛名」で、ルーターを通るたびに次の区間用のものに付けかえられます。
IPv4とIPv6は何がちがう?
いちばん大きなちがいはアドレスの長さで、IPv4は32ビット、IPv6は128ビットです(RFC 8200)。IPv6ではアドレスの数が大きく増え、ヘッダーのつくりも整理されています。いまは両方が並んで使われています。
pingが返らないとつながっていない?
そうとは限りません。セキュリティの理由などでpingに応答しない設定のサーバーもあります。pingが返らなくても、Webページが開けるなら、第3層より上は通じています。
まとめ
- ネットワーク層は、IPアドレスを使ってネットワークをまたいで届け先まで運ぶ層
- IPアドレス、ルーター、デフォルトゲートウェイ、ICMP(ping)が身近な例。データの呼び方はパケット
- IPは確実に届くことを保証しない。確実さは上の層(TCP)が受け持つ
- TCP/IPでは「インターネット層」にあたる
- 確かめるときは
ip a→ip route→ping→tracerouteの順に見る
前の層は第2層(データリンク層)、次の層は第4層(トランスポート層)です。どちらもシリーズの記事で解説しています。
OSI参照モデル シリーズ記事
このシリーズでは、OSI参照モデルの全体像と、7つの層を1つずつ解説しています(各記事は順に公開予定です)。
- OSI参照モデルとは?(全体像)
- 第1層 物理層
- 第2層 データリンク層
- 第3層 ネットワーク層
- 第4層 トランスポート層
- 第5層 セッション層
- 第6層 プレゼンテーション層
- 第7層 アプリケーション層
参考資料
- ISO/IEC 7498-1:1994 Information technology — Open Systems Interconnection — Basic Reference Model: The Basic Model
- ITU-T Recommendation X.200 (07/94) Basic Reference Model: The basic model
- RFC 1122: Requirements for Internet Hosts – Communication Layers
- RFC 791: Internet Protocol
- RFC 8200: Internet Protocol, Version 6 (IPv6) Specification
- RFC 792: Internet Control Message Protocol
- RFC 4443: Internet Control Message Protocol (ICMPv6) for the Internet Protocol Version 6 (IPv6) Specification

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