「Arch Linuxってどんなディストリビューション?」「Ubuntuなどと比べて、何がよくて何が大変?」と迷っている人は、特徴とメリット・デメリット、向いている人を先に知っておくと、自分に合うかを判断しやすくなります。Windowsで軽いLinuxの環境を作りたい人は、私が仕事のPCのHyper-VでArch Linuxを選んだ理由と、作る予定にした仮想マシンの構成も参考にしてください。
Arch Linuxとは
Arch Linuxは、ほかのディストリビューションをもとにせず独自に開発されている、x86-64向けの汎用のLinuxディストリビューションです。ローリングリリースという方式で、多くのソフトウェアを安定版の中でできるだけ新しいバージョンで提供しています。インストールした直後は最小限のシステムだけが入っていて、使う人が必要なものを選んで足していきます(ArchWiki「Arch Linux」、2026年10月21日時点)。公式サイトでは「軽量で柔軟なLinuxディストリビューション」と説明されています(Arch Linux公式サイト)。
Arch Linuxの5つの原則
Arch Linuxの作り方は、次の5つの原則がもとになっています(ArchWiki「Arch Linux」)。
- シンプルさ:開発元が出したままのソフトウェアを、Arch Linux独自の変更をできるだけ加えずに配ります。パッケージを入れただけでサービスを有効にするような自動化もしません。
- 新しさ:パッケージがまとめて壊れることを避けられる範囲で、ソフトウェアを最新の安定版に保ちます。
- 実用主義:原則はあくまで目安で、設計は1件ずつ開発者の合意で決めます。
- ユーザー中心:できるだけ多くの人に使ってもらうことより、Arch Linuxに貢献する人の必要を満たすことを目指しています。対象は、Linuxに慣れている人や、ドキュメントを読んで自分で問題を解決する人です。
- 多用途:インストール直後に使えるのはコマンドラインだけで、公式リポジトリのパッケージから選んで自分の環境を組み立てます。
ローリングリリースで更新し続ける
Arch Linuxは、一度インストールしたら、そのあとはシステム全体を更新し続けて使います(ArchWiki「Arch Linux」)。新しいライブラリが出ると、それを使うパッケージは公式リポジトリの側でまとめて作り直されます。そのため、一部のパッケージだけを更新する使い方はサポートされていません(ArchWiki「System maintenance」)。
Arch Linuxのシステム全体を更新するコマンド
sudo pacman -Syupacman -Syuで、システム全体を更新します。pacman -Syのあとに一部のパッケージだけを入れると部分的な更新になるので、パッケージの一覧を取り直すときは、いつもpacman -Syuで全体を更新します。更新の前には、手作業が必要な変更が出ていないかをArch Linux公式サイトのニュースで確かめるよう案内されています(ArchWiki「System maintenance」)。pacmanのほかのオプションは「pacmanコマンドの使い方」にあります。
ソフトウェアはpacmanとAURで入れる
公式リポジトリのパッケージは、パッケージマネージャーのpacmanで入れます。公式リポジトリにないソフトウェアは、利用者が作ったビルド用のファイル(PKGBUILD)を集めたAUR(Arch User Repository)で探せます。AURのパッケージは非公式で、十分に確かめられたものではないので、使うときは自分の責任でPKGBUILDの中身を確かめてから入れます(ArchWiki「Arch User Repository」)。2026年6月12日には、AURで悪意のあるパッケージの引き継ぎや更新が多く起きているとして、公式サイトのニュースで注意が出ています(Arch Linux公式サイト)。
Arch Linuxのメリット
- 必要最低限のものしか入らない:いつもの手順でインストールすると、入るのは最小限のシステムだけです。そこから、要るものだけを選んで足していけます(ArchWiki「Arch Linux」)。
- ほかのディストリビューションでは触れないコマンドを体験できる:パーティションの作成、
pacstrapでのパッケージの書き込み、arch-chrootでの設定などを、インストールのときに自分で実行します(ArchWiki「Installation guide」)。 - 軽量なディストリビューション:Arch Linuxは、公式サイトで「軽量で柔軟なLinuxディストリビューション」と説明されています(Arch Linux公式サイト)。
- ArchWikiの情報が充実している:インストールから各ソフトウェアの設定まで、ArchWikiに詳しい説明があります。ただ、初心者にはわかりにくいところもあります。
- 新しいバージョンのソフトウェアを使える:ソフトウェアを最新の安定版に保つ方針で、ローリングリリースで更新されます(ArchWiki「Arch Linux」)。
- pacmanが使いやすい:コマンド1つでシステム全体を更新できる、軽くて速いパッケージマネージャーです(ArchWiki「Arch Linux」)。私はpacmanのコマンドが好きです。
Arch Linuxのデメリット
- インストールに手間がかかる:必要最低限のものしか入らないので、ネットワークやブートローダーなどの設定を自分で進めます。公式のパッケージには画面で操作するインストーラーや設定ツールがなく、設定はコマンドラインとテキストエディターで行います(ArchWiki「Arch Linux」)。テキスト画面の質問に答えて進めるarchinstallもあります(ArchWiki「Frequently asked questions」)。
- つまずいたところによっては、ネットに情報がない:自分で原因を調べて解決しなければならないことがあります。ArchWikiも、ドキュメントを読んで自分で問題を解決する人を対象にしていると書いています(ArchWiki「Arch Linux」)。
- ハードウェアの知識も多少要る:インストールの途中で、パソコンがUEFIとBIOSのどちらで起動しているかを確かめ、それに合わせてパーティションやブートローダーを選びます(ArchWiki「Installation guide」)。
- LPICの試験範囲とは違うパッケージマネージャーを使う:LPIC-1の101試験(2026年10月21日時点の出題範囲バージョン5.0)でパッケージ管理として出るのは、Debian系(dpkg・apt)とRPM系(rpm・YUM・Zypper)です。pacmanは入っていません(LPI「LPIC-1 Exam 101 and 102 Objectives」)。
- 更新は自分で管理する:ローリングリリースのシステムが安定して動くかは、最終的に使う人の責任です。いつ更新するかを自分で決め、必要な変更は自分で取り込みます(ArchWiki「Frequently asked questions」)。
Arch Linuxが向いている人・向いていない人
向いている人
- Linuxの環境を、必要なものだけで自分で組み立てたい人
- ドキュメント(ArchWiki)を読んで、自分で問題を解決していける人(ArchWiki「Arch Linux」)
- インストールや設定のコマンドを通して、Linuxの仕組みを学びたい人
- 仮想マシンなどで、軽いLinuxの環境を作りたい人
向いていない人
ArchWikiでは、次のような人はArch Linuxを使わないほうがよいとしています(ArchWiki「Frequently asked questions」)。
- 自分で組み立てるディストリビューションに使う時間や意欲がない人
- x86_64以外のアーキテクチャで使いたい人
- GNUの定義する自由なソフトウェアだけで作られたディストリビューションを使いたい人
- インストールした直後からOSが自分で設定を済ませ、デスクトップ環境などが一通りそろっていてほしい人
- ローリングリリースのディストリビューションを使いたくない人
- 今のOSに満足している人
LPICの勉強のためにLinuxを触りたい人は、試験範囲に入っているDebian系やRPM系のディストリビューションのほうが、試験の内容をそのまま試せます(LPI「LPIC-1 Exam 101 and 102 Objectives」)。
WindowsのHyper-VでArch Linuxを使う理由
仕事のPCはメモリに余裕がなかったため、Hyper-Vで動かせる軽いLinuxを探して、Arch Linuxにたどり着きました。それまではWSL2を使っていましたが、使い込むとメモリの消費が大きくなることと、環境を複製しにくいことから、Arch Linuxに切り替えました。
特に大きかったのは環境の複製です。Hyper-Vでは同じ構成の仮想マシンを作るのが簡単なので、ベースになるArch Linuxの環境を作っておけば、検証のたびに複製して試せます。
WSLでArch Linuxを使うコマンド(2026年10月21日時点)
wsl --install archlinux今はArch Linuxの公式のWSL用イメージがあり、WSL 2が入ったWindowsでこのコマンドを実行すると入ります。WSL 1には対応していません。入れたあとは、スタートメニューの「archlinux」を開くか、次のコマンドで起動します(ArchWiki「Install Arch Linux on WSL」)。
wsl -d archlinuxHyper-Vで作る予定にしたArch Linuxの仮想マシンの構成
Hyper-VでArch Linuxの仮想マシンを作るときに、予定した構成です。スペックはあとから変えるのが簡単なので、まずは最小限の構成で作ることにしました。
- ホストOS:Windows 10 Pro
- 仮想環境:Hyper-V
- ゲストOS:Arch Linux
- vCPU:1コア
- メモリ:2GB
Arch Linuxは512MiB以上のメモリで動き、基本のインストールに使うディスクは2GiB未満です。ただし、インストールに使うライブ環境の起動にはもっとメモリが要ります(ArchWiki「Installation guide」)。ライブ環境に要るメモリは、ISOで1GiB、netbootで2.5GiBほどです(ArchWiki「Frequently asked questions」)。
Hyper-Vでの仮想マシンの作り方からArch Linuxのインストールまでは、「Arch Linuxのインストール手順」で順に進められます。
Arch Linuxを入れたあとの設定
- インストール:Arch Linuxのインストール手順
- パッケージの管理:pacmanコマンドの使い方
- Windowsからの接続:Arch LinuxのSSHの設定方法
- ターミナルの画面分割:tmuxの使い方入門
- シェル:Zshのインストール手順
- エディター:NeoVim入門者向けガイド
- バージョン管理:Gitのインストール
まとめ
Arch Linuxは、必要なものを自分で選んで組み立て、ローリングリリースで更新し続けるディストリビューションです。インストールや更新の管理に手間はかかりますが、軽い環境を作れて、コマンドを通してLinuxの仕組みを学べます。WindowsのHyper-Vで軽いLinuxを使いたい人は、まず仮想マシンにArch Linuxを入れて試してみてください。
参考
- Arch Linux公式サイト
- ArchWiki「Arch Linux」
- ArchWiki「System maintenance」
- ArchWiki「Arch User Repository」
- ArchWiki「Installation guide」
- ArchWiki「Frequently asked questions」
- ArchWiki「Install Arch Linux on WSL」
- Microsoft「Windows および Windows Server に Hyper-V をインストールする」
- Microsoft「Windows 10 Home and Pro」
- LPI「LPIC-1 Exam 101 and 102 Objectives」

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