米政府機関でDeepSeekの排除命令|対象は米連邦の文民機関、日本で使う人が確かめておきたいこと

米政府機関でDeepSeek排除命令のアイキャッチ。米連邦の文民機関のシステムからDeepSeekの製品を外すイメージ

「アメリカでDeepSeekが禁止された」というニュースを見て、DeepSeekのアプリやAPI、手元のPCで動かすモデルを使っている自分は大丈夫なのか、気になっている方へ。米国土安全保障省(DHS)の命令の対象は米連邦政府の文民機関で、日本の個人や会社の利用を禁じるものではありません。ただ、米政府が挙げた理由は、日本で使う人にも関係があります。

目次

先に知っておきたいこと:対象は米国の政府機関

  • 命令の対象は、米国の連邦政府のうち、軍・情報機関以外の行政機関(文民機関)のITと調達です
  • 米国の一般の人や会社、日本の個人や会社に向けて、DeepSeekの利用を禁じる命令ではありません
  • 日本では2025年2月に、個人情報保護委員会の情報提供と、政府機関向けの注意喚起が出ています。どちらも個人の利用を禁じるものではありません

「使ってはいけない」と決まったわけではありませんが、米政府がどんなリスクを理由にしたのかは、自分の使い方を見直す材料になります。

DHSの命令の中身

米国の官報にあたるFederal Registerに、DHSの「Notice of Order Regarding Exclusion and Removal of DeepSeek Products from Federal Civilian Executive Branch Information Technology Systems and Procurements」(文書番号2026-21447)が、2026年10月19日(米国東部時間)に公開閲覧となり、10月20日付で掲載されました。命令の本文は、この文書の付録(Appendix)に入っています。

項目内容
命令の名前Exclusion and Removal Order(番号は2026-01)
命令の日付(Original Release Date)2026年7月24日
出した人国土安全保障長官
根拠の法律連邦調達サプライチェーン・セキュリティ法(Federal Acquisition Supply Chain Security Act of 2018)
対象の会社Hangzhou DeepSeek Artificial Intelligence社(DeepSeek)と関連会社
対象の機関連邦政府の文民の行政機関(国家安全保障システムなどは除く)

官報への掲載は10月ですが、命令そのものの日付は7月24日になっています。

命令で求められていること

  1. 調達からの除外:DeepSeekと関連会社、その製品を、文民機関の調達から外す。命令が出た直後から有効で、承認済み製品の一覧や電子調達の仕組みなども含む
  2. システムからの削除:DeepSeekと関連会社の製品、さらにDeepSeekの実装を使って作られた他社の製品やサービスも、文民機関のITから直ちに取り除く。できない場合は例外を申請する

例外を求める機関は、命令が出てから60日以内に書面で申請し、CISA(米サイバーセキュリティ・インフラストラクチャー安全保障庁)が審査します。削除が終わるまでの間は、通信の監視やログの強化、データの持ち出しへの対策をとるよう求めています。長官は1年以内と、その後は毎年、この命令を見直すとしています。

国防総省(命令内の表記は「Department of War」)と国家情報長官室の管轄は、この命令の対象外です。

命令の対象範囲の図。対象は米連邦政府の文民機関のIT・調達、対象外は国防総省・情報機関の管轄と、米国の一般の人・会社、日本の個人・会社

米政府が挙げたリスク

命令は「Summary of Risks from Source」の項で、DeepSeekのモデルには複数の脅威があるとしています。おもな理由は4つです。

  • DeepSeekのサーバーは中国にあり、中国の法制度では政府が民間企業のインフラにアクセスする広い権限が認められている
  • DeepSeekが運営するサービスでは、アカウント作成時に個人を特定できる情報が集められ、利用者の追跡や端末の識別(フィンガープリント)もされうる
  • 質問を入力して答えを返すしくみのため、政府職員や取引先が使うと、機微なデータが中国へ送られるおそれがある
  • モデル自体にマルウェアなどの弱点が含まれる可能性があり、iOSアプリには深刻な脆弱性が複数あるとするセキュリティ研究がある

これは米政府が、政府の業務で使う場合のリスクとして判断したものです。一般の利用者が使ったときに実際に被害が出たかどうかは、命令には書かれていません。

日本で使っている人に関係はある?

個人で使っている場合

この命令が日本の個人の利用を制限することはありません。ただ、米政府が挙げた「入力した内容やアカウント情報が中国のサーバーに保存される」という点は、日本の利用者にも同じように当てはまる話です。

日本の個人情報保護委員会も2025年2月3日(3月5日更新)に、DeepSeekのサービスで取得された個人情報を含むデータは中国にあるサーバーに保存され、中国の法令が適用されると情報提供しています。

  • 名前、住所、電話番号などの個人情報や、他人の情報を入力しない
  • 仕事の資料、パスワード、APIキーなど、外に出したくない情報を入力しない
  • アプリを入れる場合は、プライバシーポリシーとアプリに与える権限を確かめる

会社で使っている場合

会社でDeepSeekのアプリやAPIを使っているなら、社内のルールで使ってよい範囲が決まっているかを確かめてください。業務の情報を入力してよいか、誰が使ってよいかを決めておかないと、担当者ごとに判断がばらばらになります。

米国の連邦政府機関に製品やサービスを納めている会社は、注意が必要です。命令は「DeepSeekの実装を使って作られた他社の製品やサービス」も文民機関のITから取り除く対象にしているため、自社の製品の中でDeepSeekのモデルやAPIを使っていないかを確かめておくと安心です。

日本の政府機関の扱い

日本では、デジタル社会推進会議幹事会事務局が2025年2月6日に、各府省庁などへ「DeepSeek等の生成AIの業務利用に関する注意喚起」を出しています。要機密情報は定型約款に同意するだけで使えるサービスでは扱えないこと、それ以外の情報でもリスクを踏まえ、内閣サイバーセキュリティセンターとデジタル庁に助言を求めたうえで判断すること、という内容です。

これは政府機関の業務での使い方についての注意で、米国の命令のように「システムから取り除く」と決めたものではありません。

手元のPCでDeepSeekのモデルを動かしている場合

OllamaなどでDeepSeekのモデルを自分のPCで動かす使い方については、命令は個別に書いていません。命令が挙げた「アカウント情報の収集」や「入力したデータが中国へ送られる」というリスクは、DeepSeekが運営するサービスについての説明です。一方で、米政府機関の中では「DeepSeekの実装を使って作られた製品」も削除の対象になっています。

手元で動かす方法はDeepSeek-R1をmacOSでOllamaを使用して起動する方法、開発環境での使い方はDeepSeek R1×Cline×OllamaでローカルAI開発環境を作るで説明しています。会社で使う場合は、手元で動かすときも社内のルールに沿っているかを確かめてください。

DeepSeekのAPIの最新モデルについてはDeepSeek-V4.1-Flash-1017とは?にまとめています。

使い方別のチェック表。アプリ・Web版、API、手元のPCで動かす、米政府機関に納品の4つで確かめること

まとめ

  • DHSは、米連邦政府の文民機関の調達とITから、DeepSeekの製品と、DeepSeekを使って作られた他社の製品・サービスを外すよう命じた(命令の日付は2026年7月24日、官報掲載は10月20日)
  • 対象は米国の政府機関で、日本の個人や会社の利用を禁じるものではない
  • 理由に挙げられたのは、中国にあるサーバーへのデータ保存、個人情報の収集、機微なデータが中国へ送られるおそれなど
  • 日本で使う人は、個人情報や仕事の情報を入力しないこと、会社ではルールを決めておくことが大切

DeepSeekを使っているなら、今日のうちに「これまで何を入力してきたか」と「会社のルールでどう決まっているか」を一度見直してみてください。

参考

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この記事を書いた人

社内エンジニアとして、SREとセキュリティの仕事をしています。サーバーの構築や運用、クラウド環境の設計にも関わってきました。趣味はゲームと漫画・アニメ。

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