Linuxカーネルのksmbdの脆弱性ZDI-CAN-33774|修正は安定カーネルにまだない。使っているかの確かめ方と止め方

Linuxカーネルのksmbdの脆弱性ZDI-CAN-33774のアイキャッチ。ZDIの評価はCVSS 9.0でCVE番号はまだない。Sambaとは別のソフトでSambaだけなら対象ではない、修正はメンテナーのツリーとlinux-nextに入ったが安定カーネルにはまだない、pgrep・lsmod・systemctl statusで使っているかを確かめる、使っていなければksmbd.control --shutdownとmodprobe -rで止める、使っているなら修正の入ったカーネルの更新を待って当てる、の5つを示す図

Linuxでksmbd(カーネルに入っているSMB3のファイル共有サーバー)を動かしているなら、まず本当に動いているかを確かめてください。TrendAI Zero Day Initiative(ZDI。TrendAIはTrend Microの法人向け事業の名前)がLinuxのカーネルの開発者に報告したksmbdの脆弱性ZDI-CAN-33774は、修正がksmbdのメンテナーのツリーに入っていますが、2026年10月23日10時5分(日本時間)の時点で、メインラインと安定カーネル(stable)にはまだ入っていません。CVE番号もまだ付いていません。

目次

結論:ksmbdを使っているかを確かめ、修正の入ったカーネルを待って更新する

  • 対象:Linuxカーネルのksmbd。Sambaとは別のソフトで、今回の報告の対象はksmbdです
  • ZDIの評価:CVSS 9.0。ネットワークから、認証なしで届く脆弱性としています。ただし、起きるにはタイミングの競合と、ゲストで使える共有が要る、とZDIは書いています
  • 修正の場所:ksmbdのメンテナーのツリー(ksmbd-for-nextのブランチ)と、linux-nextには入っています。メインライン(7.3と、その後の最新)と、kernel.orgの安定カーネル・長期サポートのカーネルには、まだ入っていません
  • CVE:NVDにはまだ登録されていません。カーネルのCVEは、修正が安定カーネルに入ってから自動で割り当てられるのが基本です
  • やること:ksmbdを使っているかを確かめる。使っていなければ止める。使っているなら、修正の入ったカーネルの更新が出たら当てる

Sambaとksmbdの違い

SambaとksmbdはどちらもWindowsのファイル共有(SMB)のサーバーですが、別のソフトです。

  • ksmbd:Linuxカーネルの中で動くSMB3サーバー。ユーザー側のプログラム(ksmbd-tools)と組み合わせて使います
  • Samba:ksmbdとは別のSMBサーバー。カーネルの設定の説明(Kconfig)には、ksmbdの代わりにSambaを使ってもよい、と書かれています

ZDIの報告で対象の製品として書かれているのは、LinuxカーネルのKSMBDです。Sambaだけを使っているなら、この報告の対象ではありません。

報告と修正の流れ

日時(日本時間) できごと
10月1日 19時32分 修正のコミット「ksmbd: wait for negotiation before receiving another PDU」(276effe050。9月30日に作成)が、ksmbdのメンテナーのNamjae Jeon氏のツリー(ksmbd-for-nextのブランチ)に入る。linux-nextにもnext-20261001から入る(日時はコミットに記録された日時)
10月21日 8時55分 同じ修正が、いまのコミット(68f410faedaf)として入れ直される(同)
10月22日 6時36分 ZDIが、カーネルのセキュリティの窓口とksmbdの開発者に「ZDI-CAN-33774」を報告。メーリングリストにも載る
10月22日 21時16分 Namjae Jeon氏が、すでに直したと返信し、上の修正のコミットを示す

ZDIの報告によると、ネットワークから受け取った短い要求を、別の種類の要求として読んでしまい、受け取った範囲の外のメモリを読んで、その中身を応答で返してしまいます。メモリに書き込んでしまう道もある、とZDIは書いています。ZDIが試したのは7.3-rc3のカーネルです。報告の題名は「リモートでコードを実行される脆弱性」です。ZDIの公表予定の脆弱性の一覧にも、ZDI-CAN-33774が「Linux」、CVSS 9.0、報告日2026年10月21日として載っています。

修正のコミットには、原因になった変更として、2023年4月のコミット「ksmbd: fix slab-out-of-bounds in init_smb2_rsp_hdr」(dc8289f91238)が書かれています。

修正はどこまで届いたか

修正のコミットで足されたコードが、それぞれのツリーのソースにあるかを見ました。カーネルのバージョンはkernel.orgの一覧(releases.json)で確かめています。

ツリー・バージョン 修正
ksmbdのメンテナーのツリー(linkinjeon/smb.gitのksmbd-for-next) 入っている
linux-next(next-20261022) 入っている
メインライン(Linus Torvalds氏のツリー。7.3と、その後の最新) 入っていない
安定カーネル(stable)7.2.12 入っていない
長期サポートのカーネル(longterm)6.18.58・6.12.114・6.6.160・6.1.190・5.15.223 入っていない
長期サポートのカーネル 5.10.272 ksmbdが入っていない

確かめた時刻:どのツリーも2026年10月23日10時5分(日本時間)です。メインラインは、タグの7.3と、その時点の最新(10月23日8時56分(日本時間)のマージ)の両方を見ています。

NVDでも、2026年10月23日10時5分(日本時間)に「ksmbd」と「ZDI-CAN-33774」で探しましたが、この脆弱性のCVEはまだありません。Linuxカーネルの文書では、まだ直っていない問題にCVEが自動で割り当てられることはなく、自動で割り当てられるのは修正が安定カーネルに入ってから、とされています。同じ文書には、修正の前にCVEがほしい場合は、カーネルのCVEの窓口に連絡すれば、予約分の番号から割り当ててもらうよう頼める、とも書かれています。

自分のカーネルに修正が入ったかは、使っているディストリビューションのセキュリティ情報で確かめてください。ディストリビューションごとのカーネルの更新の確かめ方は、Linuxカーネルの脆弱性CVE-2026-99999の記事にあります。

ksmbdを使っているか確かめる

ksmbd-toolsのREADMEでは、ユーザー側のプログラムksmbd.mountdを起動すると、ユーザー側とカーネル側のksmbdが動き出す、とされています。まず、ksmbd.mountdが動いているかを見ます。

pgrep -a ksmbd.mountd

何も表示されなければ、ksmbd.mountdは動いていません。

次に、カーネルのモジュールとしてksmbdが読み込まれているかを見ます。モジュールの名前はksmbdです。

lsmod | grep ksmbd

カーネルにksmbdを組み込んでいる場合は、モジュールとしては表示されません。

ksmbd-toolsのREADMEによると、systemdがある環境でksmbd-toolsをビルドして入れると、systemdのユニットksmbd.serviceも入ります。サービスとして有効になっているかは、次のコマンドで見ます。

systemctl status ksmbd

カーネルのバージョンはuname -rで分かります。ディストリビューションのセキュリティ情報と見比べるときに使います。

uname -r

使っていなければ止める

ksmbdを使っていないのに動いていたなら、止めます。止めると、このサーバーのSMBの共有には、ほかのパソコンからつなげなくなります。ksmbd-toolsのREADMEには、止め方として次の2行が書かれています。

sudo ksmbd.control --shutdown
sudo modprobe -r ksmbd

1行目でユーザー側とカーネル側のksmbdを止め、2行目でカーネルのモジュールを外します。カーネルのksmbdの文書では、1行目と同じ止め方が、次の短い形で書かれています。

sudo ksmbd.control -s

ksmbd-toolsのREADMEによると、ksmbd.serviceは、ふつうのsystemdのユニットと同じコマンドで扱えます。ksmbd.serviceで起動するようにしてあるなら、次に起動したときにまた動かないように、systemdのコマンドでサービスも止めて無効にします。

sudo systemctl disable --now ksmbd

使っているなら、修正の入ったカーネルに更新する

ksmbdでファイル共有を続けるなら、修正の入ったカーネルの更新が、使っているディストリビューションから出たときに当てます。2026年10月23日10時5分(日本時間)の時点では、kernel.orgのメインラインと安定カーネルにも修正は入っていません。使っているディストリビューションのセキュリティ情報と、kernel.orgの安定カーネルの更新を見ておきます。

よくある質問

Sambaを使っている場合も対象?

ZDIの報告の対象は、Linuxカーネルのksmbdです。Sambaは別のソフトなので、Sambaだけを使っているなら、この報告の対象ではありません。

CVE番号はいつ付く?

Linuxカーネルの文書では、まだ直っていない問題にCVEが自動で割り当てられることはなく、自動で割り当てられるのは修正が安定カーネルに入ってから、とされています。2026年10月23日の時点で、この脆弱性のCVEはNVDにありません。

参考(一次情報)

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この記事を書いた人

社内エンジニアとして、SREとセキュリティの仕事をしています。サーバーの構築や運用、クラウド環境の設計にも関わってきました。趣味はゲームと漫画・アニメ。

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